二宮くんなサイト

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Nside

大学の構内に入ると智に会うことはあまりない。
もちろん、学年が違うし
そもそも取ってる学科が違うからね。
校内はめちゃめちゃ広いし、
俺も全部の教室は行ったことない。
俺も研究室に入ってからなかなか外でなくなったし。
それでも、朝は絶対一緒に行ってる。
どっちかが朝講義をとってなくても
自分の講義の時間まで図書館で待ってたりする。
もちろん、今日も。
「今日は…遅くなる?」
「ごめん、研究資料用意する」
「大変、なんだな」
「待ってる?」
「ん。一緒に帰りたいから。」
「おーの…」
朝の図書館。
誰もいないから、いつもここで別れて授業に行ってる。
その図書館の1番奥の棚に智を押し付けて、つぶらな目を見つめてた。
唇がくっつきそうなくらい顔近づけて、
わざと、触れさせないようにする。
「…好きって言えよ。二宮」
「…やだよ、ばか」
「キス。本当はしたくてたまらないクセに」
「お前がしろっつってんの。」
「好き?二宮」
「おーの」
「ほら」
さらって、おーのの指が俺の耳を掠める。
擽ったくて、身動ぎしたらダンッって位置を変えられた。
「はぁ…っ」
「ふふ、、朝から元気?」
「おいっっっ…っ」
おーのが、俺をくるくる手のひらで回す画が見える。
でも、それが今の俺にはたまらない。
「…す……」
「ん?」
なんでだろ。
いつもなら普通に言えるのに。
言えよ、って命令されたらなんか言えない。
「す…ぅ……」
「ぅ?」
2人の唇が尖る。
「ふふふふ」
「んふふふ」
なんか、笑えちゃって。
バカップルだなって。
「好きだよ、おーの」
「昔の俺みたい」
「ガキんちょ?」
「ふふ、そう」
茶色の髪の毛がさらっと、風で揺れる。
柔らかい匂いが、俺の鼻を掠ってく。
「そろそろ、行かなきゃ…」
「うん、行ってこい」
「持っててね、ちゃんと」
「待ってるよ。」
「待ってて。」
最後にキスして、俺は講義に行った。
俺は、森林科学学科というとこに在籍してる。
智がいるのは、建築学科。
すなわち、潤くんが行こうとしてた学科。
潤くんがこの学科を選んだ理由は他でもない。
俺だ。
自然に囲まれて育ったからか、俺は昔から自然が好きだった。
特に木。
桜の木の下で潤くんと休んでた元の理由を辿れば、俺があの木を見たいと言ったから。
それから俺は大学に行くなら木について勉強できるところに行きたいと懇願していた。
それを潤くんに言ったら、
〝じゃあ、俺は建築学科、行こうかなぁ″
〝行きたいとこ他にあるんじゃないの?″
〝大学はそうだけど、学科は特にね″
〝そ…でも、、、それでいいの?″
〝俺も自然好きだし。エネルギー?そう言うの感じるよ。この桜の木からも″
〝潤くん″
 そして、いつかの日か、潤くんは俺にこう言った。
〝ニノが育てた木でさぁ、俺が建物作りたいなぁ。″
〝えぇ?″
〝ロマンない?″
〝あるね…ふふ″
〝カズは大好きな木を研究して最高の木材を作って俺がそれを活かした建築をする。そこに、俺らが住むの、ふふ″
〝いいね。それ本当にいい″
そんな風に誓って決めた学科だった。
それを今、智がいわば引き継いでる。
「よし!これで終わりや!!」
「お疲れ!」
資料作りを急いでして、俺は荷物をまとめた。
きっと、俺を待ってる。
腹減った。って口尖らせて俺を待ってる。
「じゃねー!」
「おつかれー」
走って、西側の図書館へ走る。
外は暗い。
図書館の明かりが見えて、自然と笑みがこぼれた。
「おーの!!!」
図書館に入った時、
奥の机に座る智の背中、、、、と、、
「誰だ?」
女の背中があった。
近づいていく。
「おーの」
「お、二宮」
呼びかけると智は振り返って、
俺の声にその女も振り返る。
あ、コイツ、見たことある。
「終わった?」
「うん。ってか、」
少しだけ距離が近いのが気に入らなくて、
智の肩をきゅっと掴む。
そしたら、その女は俺の掴んだ手に目をやってから、ニッコリと微笑んだ。
「二宮くんよね?森林科学学科の」
「はい、あの、、、」
そしたら、智が言う。
「助教授。俺の学科の」
「あぁ」
「海外から呼ばれてね。夜村です」
軽く会釈だけして、智に向き直る。
「腹減った」
「ん、どっか食いに行こう」
「うん。早くして」
「ふふ、分かったって」
ペシペシ叩いていたら、
女はすっと立ち上がって、、、
「仲がいいのね、2人は」
そう、笑った。
その時、直感的に思った。
嫌だ、コイツ。
「じゃあ、私は行くわね。じゃあね、智くん」
「あ、ども」
そう言って図書館を後にした。
姿が見えなくなった瞬間。
「智って呼んだ」
「ええ?」
「名前で呼ばせるなんて、よっぽど仲いいんだね」
「二宮」
「俺は、苗字かよ」
「はぁ…」
「なんだよ」
気分が悪くなって、
そっぽを向いてたら、突然。
「うわぁっ。おい!」
机の上に押し倒される。
「ちょっと!誰か見てたら…っ」
「見てねぇよ、誰も」
そう言って、俺の上に智が乗っかった。
「嫉妬する和也可愛すぎ」
「ばか!俺は怒ってんだよ!」
「名前で呼ぶな。って言ってんのに勝手にそう言うんだよ、あの女」
「俺、嫌い」
横向いたら、頬を掴まれてキスされる。
「俺も、嫌い」
「え?」
「でも、教授にアイツと協力して研究手伝って言われから。」
「研究?」
「一年で唯一、俺だけ」
「…智だけ?」
「すごいだろ?」
んふふ。って柔らかく智が笑う。
「すごい、、、すごいじゃん!」
「ふふふ」
「すげぇーっ、お前、やっぱ
、すげぇよっ」
抱きついた。
だって、凄いことなんだよ。
建築学科の教授は、厳しいって聞いたことある。
その教授に研究任されるって…
それも、一年生で。
やっぱ、ただもんじゃない。智は。
「ありがと」
「智……」
「お前しか見えないから。お前だけ」
「うん」
「嫉妬は…まぁしても可愛いからしてもいいか」
「やだよ。」
「好きだぞ、和也」
いつもの智。
さっきの嫌悪感が一瞬で消える。
「和也」
「ん?」
「一年生の1番、とったからさ」
「ふふ、おまえ…」
「キスして?」
そう言った。
あの時を思い出す。
一年前なのにもう、何年も前のことのよう。
「しょうがないなぁ…」
「ふふふ、んっ」
約束だから。
キスして、俺は、智を強く抱きしめた。
でも、やっぱりこの時早く出てればよかった。
俺も智もその暗闇に潜んでいた人影に気づくことはなかったから、、、、
続く…

誰が二宮くんの責任を取るのだろう

それからしょーちゃんは、しばらくの間ここのマンションに寝泊まりして欲しいって、僕に言った。
シェアハウスでは簡単に外部から侵入できてしまう。
その点、セキュリティが万全なこっちならそれだけで抑止力があがるって。
しばらく?
聞いた僕に、滝沢先生が雅紀を諦めるまで。
しょーちゃんはそう答えた。
シェアハウスの、和のことは心配だけど、僕がシェアハウスに居た方が危ないかもしれないとは、思う。
でも、僕は和の保護者っていう立場で、僕は。
どうして、いいか。
「雅紀。色々心配なのは分かる。二宮くんを放っておけないのも、分かる。でも、考えれば考えるほど、人って自分が望むことから離れていってしまうと俺は思ってる。経験上そう思う。思ってる。聞き方を変えよう、もっと簡単にしよう。雅紀はどっちの方が安心して眠れる?」
どっちの方が。
シェアハウスとしょーちゃんのマンション。
それは。
昨日の今日でぐっすり眠れた。
「………こっち」
「………うん。じゃあしばらくこっちに居よう?ただ、シェアハウスも心配だから、警察に相談しよう。下半身丸出しの不審者が居ましたとでも」
「………え」
「滝沢先生ってことは言わないから大丈夫。あくまでも不審者がって、それだけ。それでどこまでやってもらえるかは分からないけど、相談だけでもしておけば電話1本で駆けつけてくれるはずだから」
そしてしょーちゃんは身体を離して、僕の頬に触れた。指で撫でる。
優しい優しい、どこまでも優しい目で、じっと僕を見つめて。
雅紀って。
その想いが見えるかのような声で、僕を呼ぶ。
「俺にできる全てをやらせて」
「………え?」
「後悔したくないんだ。二度と。できることがあるのに迷ってやらずにいて、結果できなくなる。あんな思いは………もう、いやだ。絶対に、いやなんだ」
それは。
それはしょーちゃんの、亡くなったっていう恋人の、こと?
しょーちゃんの目が真っ直ぐすぎて、僕は金縛りにあったかのように動けなかった。
「雅紀が好きだよ。どんな雅紀でも好きだ。どんな雅紀でも、雅紀が汚いっていう雅紀でも、生きて俺の前に居てくれる雅紀は、それだけでキレイで、貴さしかない」

しょーちゃんのその目はほんの少しだけ、涙で潤んでいた。そう、見えた。
雅紀。
しょーちゃんの言葉が続く。
俺は雅紀が雅紀だから好きなんだ。
良いことも悪いこともあるよ。それは俺だってそう。これからだってそう。
起こったことは変えられない。悪いことは特に気にして落ち込んで、何でだっていつまでも胸に痛い。でもこれからどうしていくかってことは、自分次第だ。
俺は雅紀と居たい。雅紀が俺を好きだって言ってくれるなら、俺は雅紀と一緒に良いことも悪いことも共に味わって、共にこれからを考えていきたい。そして俺にできるすべてをやりたい。後悔しないように。
雅紀。
どんな雅紀でも、俺は雅紀を好きでいる。信じて。
雅紀がここに、生きてここに居てくれることが俺の最高で最大の喜びなんだ。
だから雅紀。頼む。
「死なせてって、それだけは。それだけは、言わないで。もう二度と、俺から大切な人を奪わないで………」
しょーちゃん。
僕が見ている前で、しょーちゃんはぼろぼろと涙をこぼした。
しょーちゃんは、優しくて穏やかで揺るぎない強い人だと、思っていた。
それも確かに、しょーちゃん、だけど。
「ごめん、ね、しょーちゃん」
大切な人を喪うという、大きな悲しみを胸に抱く人なんだって。
僕は今初めて、認識した。しょーちゃんが強すぎて、気づいていなかった。
だからこそ、しょーちゃんはこのしょーちゃんなんだって。

しょーちゃん。

しょーちゃんの愛情に包まれて、僕はこれからを、悪魔を何とかすることができるのかな。
静かに涙を流すしょーちゃんを抱き締めて。
僕はまだ、不安でいっぱいだった。

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