二宮くんをマスターしたい人が読むべきエントリー30選
それから、おいらは再び施設長と警官に入ってもらって、きちんと説明した。
島でニノと出会ったこと。
島に家族がいて、この5年、ニノが行方知らずになっていたこと。
警官が、身元照会しますと言って、警察署に戻って行き、ニノを施設に常駐する看護師に看てもらっている間に、島の二宮の家に電話を入れた。
おばさんが、電話の向こうで泣いていた。
おばさんは、5年前においらが人魚のおばあさんと出会ったことを知っていて、ニノが本当に姿を現したことに驚いていた。
─じゃあ、本当に、本当に和也くんはこの世界に帰ってこれたのね。─
「はい。近いうちに一度、島に戻ります。」
そして電話を終えた。
職員室に来た施設長が、
「今まで、いろんな孤児を助けてきたけれど、偶然、探してる相手と出会う場所になるなんて初めてで、なんと言っていいのか…。」
そこまで言って、言葉を詰まらせた。
「大野くん、誰にも言わず頑張ってたのね。二宮くんにまた会えて、本当によかった。だけど…。」
ハンカチで目頭を押さえながら、施設長はためらいがちにおいらを見た。
「大野くんも、島に帰るの?ここを、辞めるのは淋しいわ。」
そう言ってもらえて、おいらは本当に嬉しかった。
ニノを思っている間に、おいらはこうして、誰かに必要とされる人間になれてたんだって。
「おいら…ここで働きたいです。おいらたちみたいに、探してる人と会える子どもがいるかもしれないから。その手伝いがしたいと思ってます。」
「大野くん…!」
施設長は、嬉しそうに頷いた。
「もちろん、私は大歓迎よ。でも、二宮くんはどうするの?」
「それは…ニノの返事を待ちます。もう、いなくなることはない。2人の気持ちが繋がってる限り、おいらとニノは、大丈夫だと思うから。」
「そう…。あなたたちは、強い絆で結ばれてるのね。」
「はい!」
満面の笑みが溢れるのも、5年ぶりのことだった。
───────
それから、数日後。
おいらはニノと空港にいた。
島のある県まで飛行機、そこからはフェリーで島に渡る。
少し早い夏休みをもらって、おいらはニノとしっかり手を繋ぎ、搭乗入口へと向かう。
「島に帰ったら、何する?」
おいらが聞くと、
海に行く。
ニノが、おいらの顔を見て、ふふふ、っと笑った。
「そうだな。おいらも久しぶりだ、島の海は。」
お母さんとお父さんに会う。
「うん、真っ先に行こうな?」
お土産も持って、高校のクラスメイトにも会いたい。
やりたいことがたくさんありすぎて、夏休み中にやり切れるかわかんないくらい。
大野さん、好き。
ニノがはにかみながらそう言うから、おいらも笑顔になった。
あの島は、おいらとニノの愛がある場所。
そして、これからが待ってる場所へ。
2人の生きる道は、まだ始まったばかりだから────。
おしまい。
ありがとうございましたm(_ _)m
何とか、最終話までたどり着きました。
読んでくださった方、いいね、をいただいた方、すべての方にたくさんの感謝を込めて。
史緒でした☆。.:*・゜